忍者ブログ
東方projectについてあーだこーだ言うブログ(性的な意味で)
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

冬コミお疲れ様でしたー!(挨拶)

はい、今更ですねそうですね。

告知の時だけ息をするブログ、それがわちきのスタイル。

で、3月11日浜松町産業貿易センターで開催される風見幽香オンリー「華激ノ宴」で、なんか出します。

表紙



風見幽香、姫海棠はたて中心の小説本
『きみにさくはな』
A6文庫判 68頁
「華激ノ宴」スペース桔梗-05にて頒布予定
表紙は安心と信頼のムラさんです

です。

サンプルは続きをみるで。
 

 【場景】

 その花は、春を待たずに枯れると聞く。

 かさと枯葉を踏みしめながら、当て所もなく、歩き続ける。
 遠くで滝の落ちる水音が眠る猫の吐息の様に、耳へと響く。
 細長い矩形に縁取られた世界。
 そこに、不意に翡翠の色が過ったのは。
 「おや、天狗様も見に来たの?」
 くつりと唇だけで微笑む姿を、反射で撮っていた。
 「あんた、何しに此処へ?」
 日傘を差して、悠然と立ち尽くす風見幽香に問い掛けたその声には、怪訝さが知らず滲んでいた。
 柄に両手は添えるばかり、まるで肩だけで支えられている様な気安さで、日傘がくると円を描いて、廻る。
 横顔は唯、笑顔だけで固定されていて、いっそ何も心には滲んでなどいない様で。
 「あら、貴方も見に来たのではなかったの」
 歩む足は留めずに、花の妖怪は、枯れた山の中を歩き続ける。
 何となく、本当に何となく、はたてもそれに続いた。
 風が一つばかり薙いでいく。
 軋む嘆きを溢す木。
 「何をよ」
 「花よ」
 「花?」
 自分でも間の抜けた声だと思っていた。
 「そうよ。もうじき、春が来るもの。そうしたら、枯れてしまうわ」
 「冬にだけ咲く花?」
 「違うわ。春に殺されてしまう花」

 その花を咲き誇るのを望む者など誰一人としていないと聞く。

 「これよ。墨椿の花。此処にしか咲いていないのよ」
 陶磁器の艶を帯びた指先が指し示す、その先には一本の低木が生えていた。
 冬に飲み込まれた森の片隅、咲く黒い椿の木を見て、はたては。
 「何よ、これ……」
 ただ、奥歯を震わせていた。
 花と葉。
 零れた太陽の日差しによって映し出された一枚の軌跡が描く絵は。

【追憶】

視線だけで、はたてを見据えて、椛は僅かに訝しさを滲ませた声で。
 「はたて様。恋をする事は、そんなに悪い事なのでしょうかね?」


「貴方の妄想新聞にしては、中々に良い皮肉の利いた告発文じゃありませんか」
 違うと、口を告げようとも。


 「私はね……唯、見せたかっただけなのよ」
 だって、あんなに綺麗だったのだから。
 はたては、寝具の上に膝を抱えながら座り、膝の合間に顔を埋めていた。
 言葉を、文は背中越しに聞くばかり。
 きぃと握ると、あの時の新聞が手の中でかさりと泣いた。
 「私の見た物を、皆に見て欲しかっただけなの」
 静寂ばかりが鳴り響く。
 「でもね、あの花が私に言っていた。
 私の見た景色を、皆に見せた所為で、母さんはいなくなったんだって」

【回想】

 ある朝、目が覚めた時に、風見幽香には生きていると云う事が如何云う事か分からなくなっていた。

 「ねぇ、エリー。貴方、死神よね」
 「ええ、間違う事なき死神です」
 「貴方、生きているか死んでいるか、理解出来る?」
 「ええ、勿論ですとも」

 「ねぇ、エリー」
 「何でしょうか、幽香様」
 「貴方の目の前で沢山殺すから、いつから死んだのか教えて貰えるかしら」

 そう云うと喚く妖精の腹を足で踏みつける。
 右手には何処からか取り出した一本の木の杭が握られていた。
 何をされるのか、さわと顔を青くするその前に、行為は既に完了していた。
 空いた手で無理に口を開けると、幽香はゆっくりと杭を妖精の口の中に捻じ込んだ。
 ばたばたと暴れても、踏みつけられている所為で逃れられない。
 口の中に杭を差し込んで、妖精の体を踏みながら、杭の先へと両手で体重を込めていく。
 めきりと、何かが拉げていく音が鈍く響く。
 「ねぇ、エリー」
 「なんでしょう」
 「妖精の頭って、案外硬いのね」
 「へぇ。生活に何の役にも立たない豆知識ですね」
 「その通りね」
 そう言って、二匹はかかと朗らかに笑い合っていた。

 赤黒い紡錘状の蕾が、ゆっくりと伸び、まるで失った首の代わりにでもなろうかとも云うよりに。
 子供の頭ほどに膨らみ、幾重にも重なった花弁を開かせる。
 花芯の真ん中には眼球を思わせる様な形をした幾つもの丸い形状の珠が犇めいて。
 花が開く。
 蘇芳をより黒くした様な、まるで静脈から溢れた血の様な、そんな色をした。
 赤い、向日葵が、生えていた。

 「ちゃんと殺してくださいね。殺してくれるまで、ずっと見ていますから」

【場景】

 「この花は、墨椿。またの名を」
 風が大きく吹き荒び、幽香の髪が希う様に踊った。

 「咎告げの花」


 その花は、人の過去を暴き立てると聞く。
PR
Comment
color
name
subject
mail
url
comment
pass   Vodafone絵文字 i-mode絵文字 Ezweb絵文字
無題
また癖のある花が出てくるようですね。
どのような過去が暴かれていくのかとても楽しみです。
NONAME 2012.02.27 Mon  00:20 Edit
無題
お花が好きなので色々とやってみてる次第。
内容は、うん、いつも通りです。
海綿 2012.02.27 Mon  22:04 Edit
material by Sky Ruins  /  ACROSS+
忍者ブログ [PR]
カレンダー
03 2024/04 05
S M T W T F S
1 2 3 4 5 6
7 8 9 10 11 12 13
14 15 16 17 18 19 20
21 22 23 24 25 26 27
28 29 30
リンク
フリーエリア
最新CM
[12/15 海綿]
[12/15 NONAME]
[08/05 海綿]
[07/28 NONAME]
[12/27 海綿]
最新TB
プロフィール
HN:
海沢 海綿
性別:
男性
職業:
割けるチーズを割く係
趣味:
一人観覧車
自己紹介:
キャバクラで死んだ目をする程度の能力。
バーコード
ブログ内検索
アクセス解析
カウンター